ママ・パパのきもち

SNSで他の子と比べて落ち込む夜に — 「比べさせられる仕組み」と自分を守る小さな工夫

夜、スマホを閉じたあとに「うちの子だけ遅れているのかな」「あの家はどうして楽しそうなんだろう」と胸がザワザワする経験、ありませんか。本記事では、SNSで他の子や他の家庭と比べて落ち込んでしまう感情を心理学と脳科学の視点で読み解き、自分を責めずに距離を取るための小さな工夫をまとめました。

その感情、実はとてもよくある — あなただけではありません

SNSを開くと、同じ月齢なのに歩いている赤ちゃん、きれいに並んだ離乳食、海外旅行の家族写真が次々と流れてくる。スクロールするだけで気持ちが沈む——この体験は、決して少数派のものではありません。

株式会社CREAVEの2024年12月の調査(約590名への調査)では、日本の子育て世代の 88% がSNSで育児情報を収集し、もっとも使われているのがInstagram(78%)とされています。妊婦・乳幼児ママに限るとInstagram利用率は約9割にのぼるという調査もあります(cozre調査)。

また、PIAZZAの調査(998名の親への調査)では、子育て中の女性の 74.2% が孤独・孤立を実感したことがあると回答しています。英国Priory Groupの調査では、他家族の幸せそうなInstagram投稿を見たあと「自分が不十分に感じる」親が22%、「落ち込む」親が23%。韓国ミレニアル世代の母親を対象にしたLee et al.(2025年、350名の母親を対象)では、87.7% が高い苦悩レベルを示していました。

💡 ポイント
「SNSを見て落ち込む自分はダメ」なのではなく、多くの親が、表には出さないまま同じ夜を過ごしています。感情の前に、まず事実として知っておきたい数字です。

なぜそう感じるのか — 「比べさせられる」構造の話

落ち込みの背景には、意志の弱さではなく、心理学的な構造があります。

社会的比較理論とハイライトリール

Festinger(1954)の社会的比較理論では、人は自分の能力や正しさを評価するために、自然と他者と比べると説明されます。とくに自分より優れて見える相手との比較(上方比較)は、自己評価を下げやすいことが知られています。

SNSの難しさは、流れてくるのが「他人の生活の最良の瞬間」だけに編集された、いわばハイライトリールだという点です。アルゴリズムも「映える投稿」を優先的に表示します。見ているのは意図的に選ばれた一部であって、現実の平均ではありません。

受動的な閲覧がとくに辛くなりやすい

京都大学の研究(2018年、0〜3歳の子を持つ母親523名を対象)では、スマートフォンの使い方によって孤独感が変化し、とくに受動的閲覧(見るだけ)が孤独感を高めうることが示唆されています。PMCの研究(2024)でも、育児不安の高い親では、短時間のスクロール習慣が心理的苦悩の蓄積と関連することが報告されています。

さらに、「子どもを常に優先し犠牲を払う完璧な母親」という集中的母親像(Intensive Mothering Ideology, Sharon Hays, 1996)の文化的プレッシャーが重なると、SNSでの比較が親の幸福感に与える悪影響はより強くなることが、2023年のスコーピングレビュー(Issues in Mental Health Nursing)で指摘されています。

⚠️ 注意
「比べなければいいだけ」と意志の力で止めるのは、多くの人にとって現実的ではありません。比較は人間の認知の根本にある傾向で、環境(見る時間・見るもの)の設計で対処するほうが負担が少ないとされています。

その感情と付き合う小さなコツ — 明日から試せる選択肢

完璧な解決策ではなく、「これなら試せそう」と思えるものを一つだけ選ぶ、くらいの距離感でどうぞ。

1. 「見る時間」と「見るもの」を設計する

意志ではなく環境で減らすのが鍵です。JAMA Network Openに掲載された研究では、1週間のSNS利用制限介入で、不安症状 16.1%減・うつ症状 24.8%減・不眠 14.5%減 が報告されています。すべてをやめる必要はなく、

  • 就寝前30分だけスマホを別室に置く
  • 落ち込みやすいアカウントをミュート/アンフォローする
  • 通知をオフにして「開くタイミング」を自分で決める

といった小さな調整から始める人もいます。

2. 「見るだけ」から「つながる」に切り替える

APA(米国心理学会)が引用する複数の研究では、受動的な閲覧より、発信したり交流したりする能動的な使用のほうが、精神的健康への悪影響が小さいとされています。DMで近況を共有する、似た境遇の親同士のコメント欄で一言返す——「見るだけ」から離れる工夫です。

3. セルフ・コンパッションを育てる

Kristin Neffが提唱するセルフ・コンパッションは、①自分への優しさ、②コモン・ヒューマニティ(みんな失敗する、という人間としての共通性の認識)、③マインドフルネス(感情を距離を置いて観察する)の3要素で構成されます。研究データではセルフ・カインドネスが 36%向上、自己批判が 32%低下、孤立感が 35%低下 したと報告されています。

落ち込んだ夜に、心の中でこう置き換えてみる方法もあります。

  • 「今、私は落ち込んでいる」(マインドフルネス)
  • 「SNSを見てこう感じる親は、たくさんいる」(共通の人間性)
  • 「比べてしまう自分を、いったん責めない」(自分への優しさ)

読み物として セルフ・コンパッションの入門書マインドフルネス育児の本 が、感情に言葉を与える手がかりになったという声もあります。

それでも辛いときは — 一人で抱えない選択肢

「落ち込む時間が長い」「SNSを開くのが怖いのに開いてしまう」「気づくと涙が出ている」——そうした状態が続くとき、一人で抱える必要はありません。

  • よりそいホットライン:0120-279-338(フリーダイヤル・24時間365日)。子育ての悩み専用メニューあり
  • まもろうよこころ(厚生労働省):電話・SNS相談窓口を悩みや時間帯から検索できるポータル
  • 親子のための相談LINE(こども家庭庁):LINEで匿名相談が可能
  • 自治体の子育て世代包括支援センター:地域に身近な相談先

眠れない日が2週間以上続く、涙が止まらない、何も手につかないといった状態が重なるときは、心療内科・精神科の受診も一つの選択肢です。相談することは弱さではなく、自分と家族を守るための動きのひとつです。

「比べてしまう自分」を責める夜が少しでも減り、スマホを閉じたあとに穏やかな呼吸が戻ってきますように。

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こどもの木 編集部
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⚠️ 免責事項: この記事は一般的な情報提供を目的としており、医療診断や治療の代替となるものではありません。お子様の健康や発達に不安がある場合は、かかりつけの小児科医や専門家にご相談ください。