大切なペットが亡くなったとき、幼い子にどこまで本当のことを話せばよいのか、迷う親は少なくありません。発達研究によると、子どもが「死んだらもう戻らない」と理解できるようになるのは5〜7歳ごろで、3〜5歳では死を一時的なものと捉えやすいとされています。この記事では、3〜7歳ごろの子どもを中心に、死の理解の発達と、米国の小児科・児童精神医学の学会がすすめる伝え方を紹介します。
幼児は「死」をどう理解しているの?
死の理解には「3つの要素」がある
Speece らが1984年に発表した、それまでの研究をまとめたレビューでは、死の概念を次の3つの要素に分けて整理しています。
- 不可逆性: 死んだら、もう生き返らない
- 無機能性: 死ぬと、体の働き(動く・食べる・見る・聞くなど)がすべて止まる
- 普遍性: 生きているものは、いつかみんな死ぬ
このレビューによれば、現代の都市・産業社会で暮らす健康な子どもの大半は、5〜7歳の間に3つの要素すべてを理解するとされています。
年齢別の目安(個人差があります)
機関や研究によって目安の年齢には幅があります。「何歳なら分かるはず」と決めつけず、その子の様子を見ながら話すのがよさそうですね。
5〜6歳でも、約3割はまだ理解の途中
中国の5〜6歳児114人とその母親を対象にした Liu ら(2024年)の調査では、十分に理解できていた子の割合は次のとおりでした。
- 不可逆性(もう生き返らない): 67.8%
- 無機能性(体の働きが止まる): 57.1%
- 普遍性(みんないつか死ぬ): 55.3%
裏を返すと、不可逆性が未成熟な子は30.4%、普遍性が未成熟な子は33.9%。同じ年齢でも理解の度合いは大きく違います。なお、この調査は中国の子どもが対象なので、日本の子どもにそのまま当てはまるとは限らない点には注意が必要です。
興味深いのは、死についてオープンに話す家庭の子どもほど、普遍性や死の原因についての理解が高かったこと。また、実際に死の出来事に触れた経験は、「もう生き返らない」という理解と関係していました。
「遠くへ行った」「眠っている」が勧められない理由
「天国へ旅に出たんだよ」「ずっと眠っているの」。子どもを悲しませたくない優しさから、こうした言い方を選ぶのは自然なことです。
ただ、死を一時的なものと捉えやすい幼児にとって、あいまいな表現は「いつか帰ってくる」「いつか目を覚ます」という意味に受け取られやすくなります。米国小児科学会は、「眠った」「長い旅に出た」といった言い方は、子どもが眠ることや旅行することを怖がるきっかけになるとして、避けるよう勧めています。米国児童青年精神医学会も、あいまいな説明は不安や混乱を生むとしています。
幼児に伝えるときの具体的な言葉かけ
体に起きたことを、短く・具体的に
米国児童青年精神医学会は、婉曲表現を避けて、たとえば「ペットが死ぬと、動かなくなり、見ることも聞くこともなくなり、もう目を覚まさない」のように、体の働きが止まることを直接説明するよう勧めています。
米国小児科学会も、「もう会えない。だから寂しいね」のように直接的に伝え、「思い出はずっと残る」と添えることを提案しています。たとえば、こんな言い方が考えられます。
- 「ポチは死んじゃったの。もう体は動かないし、ごはんも食べないんだよ」
- 「もう帰ってこないから、会えなくて寂しいね。ママ(パパ)も寂しいよ」
- 「でも、一緒に遊んだ思い出はずっと消えないよ」
幼い子は、自分が何かしたせいだと考えてしまうこともあると言われます。気になる様子があれば、「あなたのせいじゃないよ」とひと言添えてあげるのもよいでしょう。
言葉だけで伝えるのが難しいときは、ペットとのお別れを描いた絵本を一緒に読むことで、話すきっかけをつくる家庭もあります。
何度聞かれても、同じように答える
「ポチはいつ帰ってくるの?」と、説明したあとも何度も聞かれるかもしれません。米国児童青年精神医学会は、幼い子には説明を繰り返すよう勧めています。一度で分かってもらおうとせず、そのたびに同じ言葉で、落ち着いて答えてあげましょう。
お別れの時間をつくる
米国小児科学会は、年齢に合った形で状況を伝えることで、子どもが気持ちを整理し、お別れできるとしています。お別れの儀式の例として、灰をまく、思い出のコラージュをつくる、木を植える、などが挙げられています。ただし、子どもが嫌がる場合は、本人の気持ちに従うことが大切です。
写真を貼ったり、絵を描いたりして思い出を形に残すなら、子ども向けのグリーフ(悲しみ)の本も参考になるかもしれません。
新しいペットと、相談の目安
「すぐに新しい子を」は慎重に
悲しむ姿を見ると、早く新しいペットを迎えたくなるかもしれません。米国児童青年精神医学会は、すぐに代わりのペットを迎えることは通常勧めていません。米国小児科学会も、新しいペットは「悲しみを癒す方法」ではなく、「別の新しい出会い」として考えるよう伝えています。
「自分の親もいなくなる?」という不安
米国小児科学会によると、5〜12歳の子どもは死の概念を理解していても、身近な喪失を受け入れるのは難しく、「自分の親も失うのでは」という不安から抱っこを求めることがあります。甘えが増えたときは、しっかり受け止めてあげましょう。
お子さんの認知や社会性の発達段階を知っておきたいときは、学習発達チェックで年齢の目安を確認してみるのもひとつの方法です。
まとめ
3〜5歳の子どもは、死を「また戻ってくるもの」と捉えやすく、死の理解が進むのは5〜7歳ごろが目安です。ただし同じ年齢でも個人差は大きく、5〜6歳でも約3割はまだ理解の途中という調査もあります。「遠くへ行った」「眠っている」といったあいまいな言葉より、「動かなくなった」「もう帰ってこない」「思い出はずっと残る」を短い言葉で、何度でも伝えることが勧められています。
ペットとのお別れは、親にとってもつらい出来事です。家族みんなで、ゆっくりお別れしていけるといいですね。